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2024/04/27 13:07 |
「ゲーム脳の恐怖」反響と批判
ゲームの危険性を論じた『ゲーム脳の恐怖』は、脳波測定という科学的手段を用いたことで話題になり、ベストセラーとなった。マスコミのIT関連記事や、犯罪事件報道(長崎男児誘拐殺人事件、長崎小6女児同級生殺害事件、大阪小学校教師殺傷事件など)でも幾度にわたって大きく取り上げられた結果、PTAや教育関係者~政治家(特に都道府県知事)や警察官僚に多数の支持を獲得しており、自治体による森を招いた講演会が開催されたり青少年保護育成条例の強化やゲームを規制する際の根拠や口実として掲げられるケースも多々発生している。

本書の発表と前後して、文部科学省は2002年3月から始めた「脳科学と教育」研究に関する検討会の答申で、ゲームやテレビなどを含む生活環境要因が子供の脳にどう影響を与えるかを研究するために、2005年度から一万人の乳幼児を10年間長期追跡調査することを決めた。この中で、ゲームの影響も調べられるという。

このように本書は主にゲームになじみの薄い中高年層や保護者に多くの支持者を獲得する一方で、各方面から「本書の内容には科学的な間違いや論理的矛盾、恣意的なデータ解釈が数多く見られ、疑似科学の範疇に入る」と指摘されており、「トンデモ本である」との批判を浴びている。こうした批判については、府元晶(ゲイムマン)がまとめた、AllAboutのガイドサイト「ゲーム業界ニュース」中の「ゲーム脳」関連記事に詳しい。

本書への批判としては、以下のようなものが挙げられる。

「ゲーム中毒者はβ波が低下するので痴呆症患者と同じ」という前提には根拠がない。
そもそもα波とβ波の意味を逆に捉えている。
脳波を測定するのに用いられた装置は、森が独自に開発したもので、厳格な医学的手続きを踏んでいない。そのため、測定された「脳波」の結果自体が信頼できない。
ゲーム脳の根拠とされる実験の被験者の人数が極端に少なく、統計学的にみて、行動と脳波の相関関係があると言うことはできない(統計学的に、10人以下と、極端に少なすぎる被験者の実験は全く無意味である。また、20~30人程度の被験者でも相関関係の推定精度は悪い。最低でも100人単位の被験者がいないと信頼できるデータが得られない)。
森の実験では標本の数がはっきりと記されていないものが多い。正確な標本の数がない実験については、対象者全体のうち何%がどのような異常を示したか、というような統計を取ることもできない。
森はゲームの影響を計る実験の際、対象者を「ビジュアル脳」「ノーマル脳」「ゲーム脳」などに分類しているが、この選別基準は少数の実験対象者について森が抱いた印象や憶測に基づいており、個人的な主観による分類にしかすぎず、客観的に見れば科学的とはいえない。
さらに、本書においてゲーム中の脳波を計測する実験では、ゲーム中にはβ波が出なくなり、β/α値が低下するということがゲーム有害論の根拠となっているが、実際には本書に掲載されている「運動をしている最中」のデータでも、同じようにβ/α値が低下する。それにも関わらず、ゲームは批判して運動を推奨しているというのは矛盾しており二重基準(ダブル・スタンダード)である。
ゲーム脳以前の疑似科学ではα波を「良いもの」と捉える伝統があったが、ゲーム脳では逆に「悪いもの」と捉えている。α波に注目するという発想自体は他の疑似科学理論から採り入れつつα波の評価だけ正反対にするのは都合が良すぎる。
ゲームに初めて触れる者よりも、ある程度慣れた者のほうが、ゲーム中 (「ゲーム脳の恐怖」内の実験では積み木合わせゲーム = テトリス) の脳の働きが弱いという実験結果が現れたのは、そのゲームの性質上、ゲームルール自体に慣れていることにより、単に「脳の働きが効率化」されているためであるということが十分に考えられる。しかし、以前から指摘されているにもかかわらず、そうではないという調査・立証が未だに行われていない。
また将棋・そろばん・朗読・カードゲーム・コンピュータ操作・携帯電話のメール・テレビの視聴・大学生による英語学習・音楽を聴く・肩たたきをしてもらうなどでもゲーム脳の状態になると論じられており、なかでも将棋・コンピュータ操作などについては提唱者である森自身も認めている。「ゲーム脳」を信じる教育関係者の中には、脳を活性化させるために朗読を勧める人が多い。しかし、朗読でもゲーム脳の状態になるという森の主張と対立し、矛盾している。「朗読の際に前頭前野の血流が下がる」と川島隆太が自著で指摘していることは注目に値する。

なお、本書は2003年度の第12回日本トンデモ本大賞にノミネートされ、次点を獲得した。その後、と学会の『トンデモ本の世界T』でも書評が取り上げられている。

本書で取り上げられた内容の他にも、森が講演で「テレビゲームが原因で自閉症になる」「最近、自閉症の発症率が100人に1人と増えているのは、ゲームのせい。先天的な自閉症の数は変わらないので、増えた分はゲーム脳による後天的自閉症だ」(注: 自閉症は先天的な脳機能の障害であり、ゲームなどの外的要因で後天的に起こることは絶対にありえない) など、自閉症について立場上あるまじき誤った発言を行うなど、ゲーム脳に関連した森自身の発言内容に対しても数多くの批判を受けている。

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2007/09/04 21:36 | 日記

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