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2024/03/29 01:03 |
アダルトゲームとギャルゲーの境界線
プレイステーション用ソフトとして発売された『久遠の絆』(FOG 1999)は、18禁ゲームではないながらも、実質的に『To Heart』、『Kanon』同様に高いシナリオ性を前面に打ち出した「恋愛・萌え・泣かせ」要素を組み込んだ作品で、「泣きゲー」を好む成人向けゲームユーザーからも高い評価を受けた。

また、後に一般向けゲーム(ギャルゲーと呼ばれる恋愛シミュレーションゲーム。以下そう記す)としてコンシューマーゲーム機で発売された『To Heart』、『Kanon』等は、元々成人向けとして発売されたコンピューターゲームの時においても、性的描写が希薄な作品で、ギャルゲーとの違いはちょっとした性的描写があるという点以外ではほとんど無いものであった。

このように、アダルトゲームはギャルゲーと呼ばれるゲームとも関連が深い。また原画担当スタッフなどは多くが重複している。最近では前述したコンシュマーゲーム機移植、さらにはアニメ化といったメディアミックスへの過剰な期待感から、この方面の要素を重要視したあまり、性的要素がますます希薄になったアダルトゲームも出現しており、一部過激派からはエロチズムを全面的に廃止すべきという本末転倒な話題も度々出ている。

また、『To Heart』の正統な続編にあたる『To Heart2』(AQUAPLUS 2004)がプレイステーション2(CERO15)で販売されたり、Keyブランドで発売された『CLANNAD』(2004 windows)は全年齢対象で開発されたりするなど、製作メーカーサイドにおいてもアダルトゲームとギャルゲーの境界線は益々あいまいになりつつある。

ただし、その一方でアリスソフトのように、いわゆる「実用性」を重視し、ほとんどの作品で性的な要素がゲーム内の根幹部に関わっており、ちょっとした改変によるギャルゲー化はコンセプト的に不可能という作品を作り続けているメーカーも存在する。

以前からヒットしたアダルトゲームを原作として18禁アニメを制作し、OVAとして販売する試みは多かったが、1998年に『同級生2』(エルフ)のアニメ化作品がテレビ地上波で放映された事をきっかけに、独立UHF放送局での放送を中心としたアニメ媒体を利用したメディアミックス的展開が一般化することとなった。

これについては、コンシューマーゲーム機へ移植される作品が増加する中、アニメ化の素材としてこれらの作品に着目したアニメ製作会社と、経営安定の為の収益チャンスの拡大を模索していたゲーム制作会社の利害が一致したという背景がある。また、アニメ業界にとっては制作プロダクションの増加とそれに伴う人気のコミックやライトノベルのアニメ化の権利を巡る競合の激化、それ以外にも自社企画によるオリジナル作品の不振、さらには最近のコミックやライトノベルのヒット作にはいわゆる「作品が読者を選ぶ」ものが多く、アニメ化には適さない作品が増加している事などの要素により、アニメ業界のコンテンツ不足が慢性化しているという一面も大きい。

このような流れにおいて、テレビ放送では表現できない18禁の要素ではなく、ストーリーの内容や「萌え」要素について高い評価を受けた作品にアニメ化のオファーが行われる様になり、『To Heart』、『こみっくパーティー』、『君が望む永遠』などがテレビアニメ化されている。

これらアダルトゲームを原作とするテレビアニメの大部分はUHFアニメとなっている。これは、キー局よりも放映枠の確保が容易でその放映権料も安価な上に、アダルトゲームを原作とする以上、ほとんどの作品で多かれ少なかれ避けられないお色気などの表現の規制についてキー局と比べて多少は寛容であり、さらにはDVD化して販売する収益計画も組み込みやすいためと考えられる。UHFアニメ以外ではTBSのデジタル衛星放送BS-iがこの類のアニメに比較的寛容である。

アニメーション脚本家のあかほりさとるが原作脚本を担当した『らいむいろ戦奇譚』(エルフ 2002)は、あかほりの人脈を最大限に生かす形ではあったが、ゲーム製作の発表とテレビアニメーション制作を同時に発表し、アニメ版の声優に若手アイドル声優をユニット形式で組ませるといった企画で、本格的なメディアミックスを図った最初のアダルトゲームである。これもUHFアニメとして放送されて物議を醸した。

このようなメディアミックス的展開は広がりを見せ続け、ついには『Piaキャロットへようこそ!!3』(F&C FC02 2001)が原作ゲーム発売の翌年に劇場アニメ化されるまでに至った。アダルトゲームの劇場アニメ化はこれが初である。加えて、2005年2月には『AIR』(key 2000)の劇場アニメが上映された。

さらに、2005年1月からボーイズラブ系(女性向け)のアダルトゲームからアニメ化された作品としては最初のものとなる、『好きなものは好きだからしょうがない!!』(プラチナれーべる 2000)がUHFアニメとして放映され、これに追随する形でアニメ化された、あるいは企画中のボーイズラブ系の作品が見られている。

しかし、その一方でアダルトゲーム(特にマルチヒロイン型のアダルトゲーム)を原作とするアニメには、粗悪なハーレムアニメになりやすい傾向が見られている。このような風潮は、近年の「1クール12~13話、もしくは2クール26話終了を前提」とした小規模企画のアニメの濫造に、アダルトゲームのフォーマットが適していたためという説を唱えるものもアニメファンの一部にはおり、この者たちからはアダルトゲームのアニメ化そのものについて激しい批判が起こされている。だが、そもそも、あまた存在するニーズの中からどの作品でどの程度の規模でアニメ企画を組むのか、その決定権を持っているのはアニメの販売会社及び制作会社、また彼らの背後に位置する事が多いマルチメディア系出版社であり、本来の製作能力を超えた無理のある企画をアニメ制作プロダクションが往々に抱えてしまう原因は、やはりこれらアニメ業界側の体質にあるのではないか、とも考えられる。

また、アダルトゲームのアニメ化企画はほとんどが俗に言う低予算アニメであり、この予算の少なさも作品の品質向上にとっては障壁となっている。過去の低予算アニメの品質破綻ではライトノベル原作の『ロスト・ユニバース』で起きた「ヤシガニ問題」が著名であるが、次に品質面の問題から同様の大きな騒動を発生させるのは、アダルトゲーム原作のアニメ化作品ではないかと予測している者もいる。

他にも、テレビ放送上の制約から行われる場合もあるが、アニメ製作の中心スタッフの独断によりゲームで人気となった要因を排除・否定したり、ストーリー根幹部に関わる大幅な改変が行われたケースもあり、これによりファンの間でアニメ作品へ反発や批判が示され、アニメ制作側にとって想定外の不人気となった作品も存在する。メディアミックス作品については原作ファンからの期待値が高いものが多いだけに、この様な事柄を要因として原作ファンに拒否反応が発生した場合には一転して強烈なバッシングへと繋がる事も少なくなく、さらにはこの不評がインターネットなどを通じてファンの間に伝播してゆき、後々のDVD販売などで不振に陥ったケースも見られている。

特に有名な実例としては『SHUFFLE!』(Navel 2004)のアニメ化作品(2005年)が挙げられる。このケースではアニメスタッフの方針からアニメのシナリオが原作の人気要因であったコンセプトを意図的に破棄した(というよりも否定に近い)内容で描かれたために、放送直後からNavelの公式ウェブサイトのBBSは大量の書き込みの為にサーバーが一時ダウンし、2ちゃんねるなどの匿名掲示板でも猛烈な勢いで批判を中心にスレッドが乱立するというほどの大混乱に至った。これを沈静化させるために、アニメに出演中の声優が緊急コメントをブログ等で発表したり、インターネットラジオに急遽ゲスト出演すると言った異例の事態にも発展した。しかし、アニメの内容に納得していない原作ファンは多く、この様な者たちにとってこのアニメ化作品は、アニメファンたちが用いるスラングで言うところの「黒歴史にしたい存在」でしかなくなっている。

この他にも原作ゲームの持つ独特の雰囲気やコンセプトを、アニメの監督や脚本家などがほとんど理解しないままに制作し、作品のメディアミックス効果を台無しにしてしまった作品も散見されている。この様な制作者間の意識の乖離によりファンから低品質と批判を受けてしまうアニメ作品が少なからず製作されている現実に対して、最近ではゲーム制作者側の間でも、メディアミックスに否定的でこそないが内々では懐疑的な見方を示している者も現れ始めている。

一方、メディアミックス展開に消極的な会社も存在する。それは「このようなソフトウェアは、たとえ内容的に素晴らしかろうとあくまで日陰に存在する物であり、大手を振って認知されるべき物ではない」という思想に基づく。しかし、1990年代後半にはメディアミックスに対して消極的な姿勢を取っていた保守派ブランドの筆頭格ともいえるアリスソフトが、2002年頃より自社作品のOVA化企画を許諾したように、流れが変わりつつあるのは確かである。その裏側にはやはりメディアの大容量化などによる開発費の高騰などの要因があるものと考えられている。

さらには、チャンピオンソフト(アリスソフト)、ビジュアルアーツ、アクアプラス(リーフ)、ノーツ (TYPE-MOON)、葉月(オーガスト)(※括弧内は各ブランド名)が合同企画としてTCG・リセ(lycee)を立ち上げたように、映像媒体以外にもメディアミックスは広がりを見せている。
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2007/09/09 21:05 | ゲーム

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