学習者が詰め込みによる焦燥感を感じないよう、自身の多様な能力を伸張させることを目指す教育理念のことである。ただし、正式な用語ではない。
日本ではこの理念にそって、1977年(昭和52年)、1989年(平成元年)、1999年(平成11年)に、文部科学省は学習指導要領を改訂し、授業時数の削減、学習内容の簡易化、総合科目の新設などを行った。
1977年(昭和52年) 学習指導要領の全部改正 (1980年度〔昭和55年度〕から実施)
学習内容、授業時数の削減。
1989年(平成元年) 学習指導要領の全部改正 (1992年度〔平成4年度〕から実施)
学習内容、授業時数の削減。
小学校の第1学年・第2学年の理科、社会を廃止して、教科生活を新設。
1992年(平成4年)9月から第2土曜日が休業日に変更。1995年(平成7年)4月からはこれに加えて第4土曜日も休業日となった。
1999年(平成11年) 学習指導要領の全部改正 (2002年度〔平成14年度〕から実施)
学習内容、授業時数の削減。
完全学校週5日制の実施。
「総合的な学習の時間」の新設。
2004年 国際的な学力比較調査(PISA2003, TIMSS2003)の結果発表。日本の学力低下が明らかになる。
2005年 中山成彬文部科学大臣、学習指導要領の見直しを中央教育審議会に要請。
次年度より指導要領外の学習内容が「発展的内容」として教科書に戻る。
結果
ゆとり教育により学力低下が起きたとして文部科学省は批判された。
学力低下が心配されていたゆとり教育(ここでは平成10年度から11年度にかけて告示された指導要領を指す)だが、その成果については賛否が分かれる。なお、1999年に「分数ができない大学生」が出版されて以来学力低下論争が起こり、多くの学力向上メソッドが脚光を浴び、その中でも陰山メソッドの百ますドリルは2003年にベストセラーとなった。
2003年にIEA(国際教育到達度評価学会)が行った国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2003)[1]では、中学2年生の数学は前回のTIMSS1999年よりも9点、前々回のTIMSS1995よりも11点、いずれも有意に低くなっている(順位は5位のまま)。小学算数の「4.03-1.15」の正答を選ぶ問題では、正答率は72.3%であったが、これは1995年の87.3%より15%も低かった。このように同一問題の正答率の差による問題数の分布をみてみると、同一問題79問中、前回よりも正答率が上回った問題は7問(8.9%)しかないのに対し、下回った問題は72問(91.1%)と大部分を占めた。このため、ゆとり教育による学習内容の削減が、数学力低下に何らかの影響を与えていることは否定できない。
同調査ではほかに、「数学の勉強が楽しい」かについて「強くそう思う」割合は9%(前回は6%)と若干増えたものの、国際平均29%と比べると依然低いままであった。また「そう思う」割合は30%(前回33%)、「そう思わない」「まったくそう思わない」割合は61%(前回61%)で、これは前々回の1995年(54%)より7%増えている。
2003年に国立教育政策研究所が行った調査[1]の結果では、多くの学年、教科で前回調査と同一の問題については、正答率が有意に上昇した設問が、正答率が有意に下降した問題よりも多かった。特に、小学生と中学3年生の学力向上が顕著で、理科では前回より正答率が上昇した。 しかもアンケートで「勉強が好き」「どちらかというと好きだ」と答えた子の割合は増加傾向にある。 一方、「導入から2年足らずで結果が出たのか」「ゆとり教育に危機感を抱いた家庭の教育の結果ではないか」など、ゆとり教育そのものの効果であるとは必ずしも言えず、この調査結果の解釈は難しい。
2006年1月に行われた大学入試センター試験では、現役受験生は中学3年生から新学習指導要領で学んだ1期生となった。新学習指導要領では学習内容が減り、入試で高校生の学力低下が表面化するのではないかと注目されていた。ところが、予備校の実施する模擬試験などの結果によると、ゆとり教育世代の現役生が例年に比べ、学力が極端に落ちたという傾向は出ていないという(これについては「出題される範囲も減っているため、正答率がある程度上昇するのは当然のこと」という意見もある)。
更に2007年4月13日に文部科学省が発表した教育課程実施状況調査においても、平成10年以降の指導要領で学んだ高校生はそれ以前の指導要領で学んだ高校生に比べ、同じ内容の問題181問(総数657問中)についていえば、正答率は145問が前回並、26問は前回を上回るという結果になった。同時に学習についての意識面でも「勉強は大切」と答えた生徒の割合は増加するなど、学力の向上を示す指標もみられた。これについて調査を行った国立教育政策研究所は、「(学力は)改善の方向に向かっている」と分析したが、同じ内容の問題で正答率が前回より上回った問題は26問しかなくしかも化学など特定の科目に偏っていたこと、文部科学省が設定した想定正答率では想定を下回る問題が多いなど、必ずしも学力が向上したとは言えないという意見もあり、この調査結果の解釈も難しい。

日本ではこの理念にそって、1977年(昭和52年)、1989年(平成元年)、1999年(平成11年)に、文部科学省は学習指導要領を改訂し、授業時数の削減、学習内容の簡易化、総合科目の新設などを行った。
1977年(昭和52年) 学習指導要領の全部改正 (1980年度〔昭和55年度〕から実施)
学習内容、授業時数の削減。
1989年(平成元年) 学習指導要領の全部改正 (1992年度〔平成4年度〕から実施)
学習内容、授業時数の削減。
小学校の第1学年・第2学年の理科、社会を廃止して、教科生活を新設。
1992年(平成4年)9月から第2土曜日が休業日に変更。1995年(平成7年)4月からはこれに加えて第4土曜日も休業日となった。
1999年(平成11年) 学習指導要領の全部改正 (2002年度〔平成14年度〕から実施)
学習内容、授業時数の削減。
完全学校週5日制の実施。
「総合的な学習の時間」の新設。
2004年 国際的な学力比較調査(PISA2003, TIMSS2003)の結果発表。日本の学力低下が明らかになる。
2005年 中山成彬文部科学大臣、学習指導要領の見直しを中央教育審議会に要請。
次年度より指導要領外の学習内容が「発展的内容」として教科書に戻る。
結果
ゆとり教育により学力低下が起きたとして文部科学省は批判された。
学力低下が心配されていたゆとり教育(ここでは平成10年度から11年度にかけて告示された指導要領を指す)だが、その成果については賛否が分かれる。なお、1999年に「分数ができない大学生」が出版されて以来学力低下論争が起こり、多くの学力向上メソッドが脚光を浴び、その中でも陰山メソッドの百ますドリルは2003年にベストセラーとなった。
2003年にIEA(国際教育到達度評価学会)が行った国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2003)[1]では、中学2年生の数学は前回のTIMSS1999年よりも9点、前々回のTIMSS1995よりも11点、いずれも有意に低くなっている(順位は5位のまま)。小学算数の「4.03-1.15」の正答を選ぶ問題では、正答率は72.3%であったが、これは1995年の87.3%より15%も低かった。このように同一問題の正答率の差による問題数の分布をみてみると、同一問題79問中、前回よりも正答率が上回った問題は7問(8.9%)しかないのに対し、下回った問題は72問(91.1%)と大部分を占めた。このため、ゆとり教育による学習内容の削減が、数学力低下に何らかの影響を与えていることは否定できない。
同調査ではほかに、「数学の勉強が楽しい」かについて「強くそう思う」割合は9%(前回は6%)と若干増えたものの、国際平均29%と比べると依然低いままであった。また「そう思う」割合は30%(前回33%)、「そう思わない」「まったくそう思わない」割合は61%(前回61%)で、これは前々回の1995年(54%)より7%増えている。
2003年に国立教育政策研究所が行った調査[1]の結果では、多くの学年、教科で前回調査と同一の問題については、正答率が有意に上昇した設問が、正答率が有意に下降した問題よりも多かった。特に、小学生と中学3年生の学力向上が顕著で、理科では前回より正答率が上昇した。 しかもアンケートで「勉強が好き」「どちらかというと好きだ」と答えた子の割合は増加傾向にある。 一方、「導入から2年足らずで結果が出たのか」「ゆとり教育に危機感を抱いた家庭の教育の結果ではないか」など、ゆとり教育そのものの効果であるとは必ずしも言えず、この調査結果の解釈は難しい。
2006年1月に行われた大学入試センター試験では、現役受験生は中学3年生から新学習指導要領で学んだ1期生となった。新学習指導要領では学習内容が減り、入試で高校生の学力低下が表面化するのではないかと注目されていた。ところが、予備校の実施する模擬試験などの結果によると、ゆとり教育世代の現役生が例年に比べ、学力が極端に落ちたという傾向は出ていないという(これについては「出題される範囲も減っているため、正答率がある程度上昇するのは当然のこと」という意見もある)。
更に2007年4月13日に文部科学省が発表した教育課程実施状況調査においても、平成10年以降の指導要領で学んだ高校生はそれ以前の指導要領で学んだ高校生に比べ、同じ内容の問題181問(総数657問中)についていえば、正答率は145問が前回並、26問は前回を上回るという結果になった。同時に学習についての意識面でも「勉強は大切」と答えた生徒の割合は増加するなど、学力の向上を示す指標もみられた。これについて調査を行った国立教育政策研究所は、「(学力は)改善の方向に向かっている」と分析したが、同じ内容の問題で正答率が前回より上回った問題は26問しかなくしかも化学など特定の科目に偏っていたこと、文部科学省が設定した想定正答率では想定を下回る問題が多いなど、必ずしも学力が向上したとは言えないという意見もあり、この調査結果の解釈も難しい。
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